日本の馬を知ってください
皆さんは、日本の在来馬(ざいらいば)をご存知でしょうか?
私たちが毎週の競馬で目にするのはサラブレッドという種類の馬で、速く走るのに向いています。JRAでは1995年まで、サラブレッドよりひと回り小さいアラブという種類の馬も走っていました。アラブをより速く走らせようと、品種改良を加えて誕生したのがサラブレッドです。これらは主にヨーロッパやアメリカで生産されてきました。
日本には公営競馬として、現在は帯広競馬場のみで行われている「ばんえい競馬」もあります。がっしりとした大きな体で、1トンにも及ぶそりをひいてレースをします。ここで活躍しているのはペルシュロン、ブルトン、ベルジャンといった種類の馬で、主にヨーロッパで生産された馬たちです。
そして、日本には古来より、純血種の馬が各地にいました。「いました」と過去形で書いたのは、すでに絶滅してしまった種類もあるからです。純血種の日本の馬たちは在来馬と呼ばれ、外来馬と区別されます。
日本の在来馬は、農耕機械や運搬機械が発達する昭和の時代まで、第一次産業の助っ人として活躍していました。重い荷物を背負って山に登り、重い荷車をひいて田畑に向かいました。そして人を乗せて車のように走りました。農家は馬を家族の一員として大切にし、住居と厩(うまや)が一体となった曲り家を建て、馬の世話が上手な嫁が喜ばれました。農山村では、そんな暮らしが当たり前だったのです。
ところが、機械文明が発達すると、そうした在来馬たちは仕事を失ってしまいます。馬の仕事は機械が取って代わるようになり、馬たちは一頭、また一頭と姿を消して行きました。気が付くと日本の在来馬は、全国でも2千頭あまりに激減してしまいました。そして今なお、絶滅の危機に直面しています。
日本の在来馬で現存するのは、
北海道和種馬 ほっかいどうわしゅば(通称どさんこ) 1700頭前後
木曽馬 きそうま 128頭
野間馬 のまうま 78頭
対州馬 たいしゅううま 26頭
御崎馬 みさきうま(国の天然記念物) 120頭
トカラ馬 とからうま 107頭
宮古馬 みやこうま 22頭
与那国馬 よなぐにうま 97頭
※頭数は2003年のもので現在はさらに減少している
この8種類だけです。それぞれの在来馬に保存会が発足し、その保存と活用について活動を行っています。
なお、すでに純血種が絶滅してしまった在来馬としては、南部馬、三春駒、三河馬、能登馬、土佐馬、日向馬、薩摩馬、甲斐駒などがあります。
また、吹雪に耐える姿が有名な青森の寒立馬(かんだちめ)は、在来馬と外来馬を交配して改良した農用馬です。
日本の在来馬の特徴は、第一に「気が優しくて力持ち」なところです。第二に「側体歩」が挙げられます。前後の脚を同時に前に出す早歩きの仕方で、サラブレッドなどには見られません。上下動が少ないため、特に乗馬に適します。最近ではこうした特長が、運動障害のリハビリや自閉症(※脳の病気であり心の病気ではありません)の治療に高い効果があることが認められ、乗馬セラピーとして注目されています。
余談ですが、時代劇に登場し、侍を背中に乗せてさっそうと駆けているのは、サラブレッドやアラブです。しかし、当時の日本にはこれらの馬がまだいるはずはなく、実際に乗られていたのは、ずんぐりむっくりした日本の在来馬でした。その姿を想像してみるのは楽しいことです。
このように、有能な日本の在来馬を絶滅させないためには、まずよく知っていただくことです。次に、機会があったら会いに行ってください。そして、ぜひ乗ってみてください。さらに、各保存会と連絡を取ってみてください。彼らは絶滅させまいと必至です。
馬を愛する競馬梁山泊からのお願いです。
